相続した株の譲渡所得税?
海外在住者、特に米国在住者が日本の相続の際に絶対に知っておくべきなのが株資産の分割。相続税でなくて所得税の話になるんだけど、長年保有され含み益が大きい株を相続した場合、分割方法でその後の税金が大きく変わってくる。
海外在住者が日本で株を相続取得したシナリオを考えてみるとしよう。この場合、日本の証券会社は原則非居住者の新規口座開設をしない。なので相続した株は現金化されることになり、「非居住の相続人が株を売却した」扱いになる。
ふつうは含み益がある株を売却すると日本では譲渡所得税、アメリカだったらキャピタルゲイン税を取られるよね。ところがですよ、「米国在住者が相続時に現金化する場合」は日米どちらでも譲渡所得税がかからないのよ。
無税はいいぜい
なぜかというと、まず日本の税法では非居住者は日本で株を売買しても譲渡所得税はかからない。日米租税条約でも居住地課税なので二重の根拠で非課税。日本側は「アメリカで税金はらってね、グッドラック」ということになる。
米国ではキャピタルゲインはもちろん課税される。ところが相続時には特例がある。
ステップアップと言って「相続した資産の原価は時価にリセット」という税法があり相続した株の含み益はゼロになる。どれだけ含み益があってもゼロにリセット。だから現金化された時点で、キャピタルゲインは無い。無い利益に税金は発生しない。
要約すると米国在住者が日本で相続した株は現金化される。その際日本でも米国でも税金がかからない。無税はいいぜい。
代償分割の落とし穴
で、株の相続でよくあるのが、代表者が株を一括取得して他の相続人に代償金を払うやり方ね。株を持ち続けたい人が株を取得して他の遺産分割や代償金で調整する。
この場合、代表者が日本在住だと株の含み益もそのままで取得するので、将来の売却時に税金がかかる。譲渡所得税は20%。何十年も保有して多額の含み益がある場合、譲渡所得税はとんでもない額になる。
逆に米国在住者が一括取得して現金化すると、日本でも米国でも税金はかからない。
だから含み益の多い株を相続する場合、税金対策としては米国在住の相続人が全部相続し、その分他の遺産の分割で調整、というのが一番賢い。
ただし、これは日本在住の相続人の税金対策になる、という話で米国在住者は自分の分でも一括でも、取得した株の含み益はリセットされるので変わらない。
ここで米国在住者がやってはいけないのは、日本の代表者に株を一括取得させて、譲渡所得税を差し引いた代償金を受け取ること。含み益が無い株ならまだいいが、わざわざ税金を払う分割にするのは是非とも避けたいところだ。
揉めてる場合の対処
揉めてる相続や調停だったら、海外在住の相続人が全株取得の分割を提案しても、日本在住の相続人は株の取得に固執して拒否する、と言うことはあり得るだろう。
そういった場合、日本在住者が多額の譲渡所得税を抱え込むのは勝手だし、節税になることを説明する義務もない。 含み益が大きい株を無税で現金化できるチャンスなんて一生に一回あるか無いか。他の相続人がその恩恵に預かろうとしなくても、海外在住者は機会を無駄にしないのが正解だよね。
情報収集の際の注意
ところで日本で非居住者の株式譲渡所得が非課税なのは税法で決まってるけど、証券会社が非居住者の口座開設を断るのはコンプライアンス上の運用。この運用は証券会社ごとのルールで、将来変わる可能性もある。自分の経験では非居住者でも相続時には例外的に口座を作れる、という 証券会社もあった。
この辺は日米どちらでもふつうの税理士やアカウンタントは扱った事が無く知らないと思う。なので丸投げするのは要注意。
さらに自分は証券会社に連絡してリサーチしたけど、海外在住者の相続に関しては支店レベルでは全く間違った事を言われることもあった。なので相続を専門で扱う部門に連絡するのが理想的。
自分の場合、いったんスペシャリストに繋がったら日本の代理人とスムースに連携してくれた。
相続の状況は千差万別だし、海外在住者は自分の場合はどうなるのかできる限り調べ、さらにダブルチェックするのがおすすめ。
富裕層はまた別の話
最後に、ここで説明したのは我々しがない一般ピープルの相続の場合で、日本でン億円、アメリカだとン十億円の相続・分割になると富裕層ターゲットの税法が関わってくる。
まぁそういった米国在住者はすでに富裕層事情に詳しいアカウンタントがいるだろうし、こんなとこで情報拾ってないで、日本で海外相続実務に詳しい税理士さんを頼んでくださいね。